オレは一生、交通事故とか救急車とは無縁だと思っていたのだけど、そんなことはなかった。
夜0時前突然ムラナカさんから電話があって「会社の近くで飲んでいるので来い!」と言うので、給料日前で金がないんだけど“富豪”が居るから大丈夫というので「行く!」とチャリで向かった。
毎朝通る道を走って、東京タワーの下あたりの5つ角の横断歩道を渡り始めて中央分離帯を越えたところで真横4 5メートルの位置にありえないものがあった。なんで車が来とるんじゃ!!!もう遅い。オレの選択肢は“とりあえずぶつかる”しかない。それ以外はもうない。
どうせぶつかるならきれいにぶつかろう!オレはこんなことではぜーったい死なない!なによりオレは悪いことはしてない!
そう念じながら、小さい頃から「車と衝突したらこうしよう」とイメージしていた通り衝突の衝撃に逆らわず体の力を抜いてなすがままなされるがままボンネットを転がり、気が付くと地面にストンと受け身。体育の授業でしかやったことのない、我ながらきれいな柔道の受け身。仰向けで右手を横に、あごを引いて頭を持ち上げる。このときの状態を写真に撮って高校のときの体育教師に送ってあげたいくらいだ。「教えの通りの受け身とったぞ」。
意識はあるし、たいしたことはなさそうなんだけど、起き上がろうかどうしようか考えながらとりあえず運転手が降りてくるのを待った。
当然だけど、相当あわてて出てきてすぐに救急車を呼ぶと言うのだけど、はっきり言って救急車に乗るほどではない。しかし、どうせ治療費とかも相手持ちになるし、一度乗ってみたい!救急車!救急車キボンヌ!!!
うまれてはじめての救急車。
タンカは出てこなかった。普通に歩いて救急車に乗り込んで普通に座った。一番近くの病院ということで六本木方面に向かいはじめた。
しかし救急隊員は背もたれ付きなのにオレには背もたれがない。なぜ?けが人ですよ、オレ。もしかしたら頭打ってるかもしれないですよ。もう少しいたわってくれてもよいじゃないですか・・・
六本木交差点で渋滞に巻き込まれてなかなか進まない。普通に「混んでるなぁ」などと思ってしまったのだが、これ、救急車ですよ・・・けが人ですよ、オレ。
ヒルズのとなりの小さな病院についた。じいさん(医者)とばあさん(奥さん、素人)しかいない。
ナースは???若くてやさしいナースは???
傷のある膝と肘のレントゲンをとって、ばあさん(素人)に赤チンを塗ってもらって終わった。ただのすり傷なのに豪勢なバンドをしてもらった。ばあさん(素人)に。若くてやさしいナースキボンヌ・・・
病院の前がちょうど警察なのでそこに行けと言う。
行くとまだ現場に行っている警察が帰ってないので30分以上くらい待たされた。
やっと帰ってきて、相手の運転手もやってきた。運転手はただただ謝るばかり。気が弱そう。カメラマンらしい。
運転手から取り調べが始まってさらに30分待ってオレの番になった。
ビックリするくらい狭っくるしい取調室。テレビで見るやつの半分もない。
「オカダさんが渡った時の信号は何色でしたか?」
と聞かれて、こいつアホか、と思いながら
「青です」
と当然のように答えたら
「実は運転手の話とまったく逆なんですよね・・・」
と。
「えええええぇぇぇぇぇ〜〜っ!!!!」
ありえん。それはありえん。オレは青だから渡ったんだ。
警察はどうも先に運転手の話を聞いたもんだからもうその頭しかなくて、オレの話は信じてくれてなさそうな雰囲気。
マジか!?こいつ!?ボケ!!
先に取り調べ受けとけばよかった・・・
交差点の図を広げてオレがさんざん説明してようやくオレの言い分も通ってきた。でもどうも納得いかないので現場まで連れて行ってもらって、実際の信号の移り変わりとかオレの進行方向とか細かく説明した。しかしラチがあかん。
また警察署に戻って取調室に座った。とりあえず書類を作らないといけないらしく、目の前に「被害者」の書類と「被疑者」の書類を置かれた。どちらかを書かないといけないらしい。しかし「被疑者」???オレがか!?アホ言うなよ。一字違いでえらい変わるが、オレは「被害者」です。「被疑者」の書類は書きません。「被害者」の書類を書いてください!
状況の説明はさんざんしたし、もうこれ以上主張することはなにもない。青だったから「青で渡った」としか言いようがない。この程度のけがでゴタゴタするのはイヤなんだけど「青じゃなかったかもしれません・・・」などと言う気はさらさらない。警察のほうも双方の意見が違う以上はそれぞれの言い分を書類にするしかないらしい。
「主張のちがう書類が出来るとどうなるんですか?」
「後日もっと詳しい現場検証をして“争って”もらうことになります」
めんどくせえ!!!イヤです!!!
幸い運転手は出来ることは何でもすると言っているので示談という方向に持っていくことにした。最低限、自転車の修理代と治療費等はすべて払ってもらうことにする。まあそんなことは当然です。
治療費のほうは後日病院に直接支払いに行ってもらうことにして
「とりあえず今日はこれですみません・・・」
と安いママチャリなら新しいのが2、3台買える程度のお金をもらった。相手は自転車が「プジョー」製というのを気にしていたのでそこにつけ込んでもっともらってもいいんだけど、手持ちはもうなさそうだし、実際チャリはまだ動きそうだし、ナカジマからのもらいものの自転車だし(それは言わなかったけど・・・)、それに、早く帰りたい・・・
警察署を出てチャリを受け取った。前輪がちょっとクネクネになっているのとサドルがはずれかかっているくらいで、その気になれば使えそう。しかし、せっかくなので週末にでも新しいのを買おう。
帰ったら5時くらいになっていた。疲れた。
もう救急車に乗ることはないと思うので今日という日は一生の思い出です。
しかしよく生きていたな・・・ぶつかった瞬間も不思議と死ぬ気はしなかったし。オレには神がついている。